私に恋してくれますか?
「足立先生の電話だけど?ひなこ?誰?」と女の人の声が出た。

まあ、そんなこともあるだろう。

「ヒトの電話に勝手に出るなよ。…雛子ちゃん?」と笑った足立先生の声がする。
自分の電話に女の人が出ても慌てた様子はない。
オトナだ。

私が黙っていると、

「黙ってるところをみると、雛子ちゃんだね。
アイツと喧嘩でもした?
どこにいるの?」といつもの声の様子で話しかけてくるので、私は少し安心して

「…どこかな…国道沿いかな
お財布持ってなくて…。」と言うと、

「しょうがないお嬢さんだな。
すぐに行くから、どこかお店の中にいて。
コンビニ見える?ファミレスは?」と聞くので、

反対車線の遠くに見える、オレンジに光る看板のファミレスの名前を言った。

「じゃ、店に入って住所聞いてメールして。」とガサガサと音がする。

先生、もう、帰っちゃうの?とさっきの声が聞こえる。

「あ、あの!無理に来なくっても…」と言うと、

「こんなチャンスは滅多にないから、レスキューさせてよ。
俺にとっては雛子ちゃんが誰より優先。」とくすんと笑って電話が切れた。


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