私に恋してくれますか?
「お見合い相手の弟が君を連れ出したのはすぐにわかったけど、
付き合っているみたいだと、一緒に暮らしているってわかって、
君のお義父さんは困ったみたいだよ。
兄弟の父親とはパーティーで顔を合わせることもあるらしいし、
まあ、家を出ていても、五十嵐家の息子には違いないし、
様子を見ているうちに俺の登場って感じだ。」

私は唖然とした顔で先生の話を聞く。

「どう?なんとなくわかった?
これから、どうする?
俺の家に来る?」とくすんと笑うので、

「ひ、ヒロミさんの家には行きません!」と俯くと、

「まあ、みなとみらいのホテルに部屋を取ってあげるよ。
静子さんに雛子さんの外泊道具は頼んであるから、
安心して。お財布も頼んだよ。
もう、きっと用意はできてる。
このまま、ホテルに週末まで、泊まること。が俺のレスキューの条件。
アホな弟の家に今は戻るな。
うやむやな感じで、ベッドに引きずり込まれても困る。
きちんと話し合うといい。」と真面目な声を出した。

何も知らないでいたのは私だけだ。

家から、連れ出してくれたトオルくんを

私は王子様だとでも、思っていたのだろうか?

トオルくんには私を連れ出す事情があっただけだ。



トオルくんは私に勇気をくれた人だと、
今では恋人だと…そう思っていた。

トオルくんは私のことを
本当はどう思っているんだろう?

何度も抱き合って眠った事も、

愛してると囁いた声も

どこまでが本当なんだろう?

私はとても悲しくなる。

涙が止まらない。


足立先生は
「よしよし。」と私に肩を貸してくれる。

私は泣き声を出さないように、足立先生の肩に顔を付けた。



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