もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
プロローグ
「この本、貴方に読んで欲しくて持ってきたの。ここに置いておくから、ちゃんと読んでね」
ミーン、ミーン、と鳴き続ける蝉の声が四方八方から聞こえて来る。そんな蝉の声を聞きながら、私はハンカチで汗を拭い、いつからか私の手元にあったお気に入りの向日葵のヘアピンで前髪をとめ直した。
暑い日差しに照らされている、私にとってかけがえのない大切な人の名前が彫られた墓石の前。そこに、向日葵の花と、一冊の本をそっと置いて両手を合わせた。
私の気持ちは、ちゃんと彼まで届いてくれるだろうか。
貴方と出会って、私はとても幸せな日々を送っていたこと。たくさんの感情、たくさんの愛を得たこと。
貴方が残してくれたものは、まだ、これからもずっとここにあるんだということ。
やっぱら、何度考え直したって私は貴方に出会えて良かったと思うこと。
私は、まだ、貴方のことが変わらず好きだということ。
それから
貴方に出会ったその時から、今まで、私にとって貴方は太陽のように眩しくて愛しい、たったひとつの存在だったということ。
空で笑っているはずの貴方に、届いてくれたらいいな、と願いながら私は瞼を閉じた────。
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