もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
「出来ることなら、ずっと君の側にいたかった。君の笑った顔も、怒った顔も、泣いた顔も、拗ねた顔も。真っ直ぐ俺を見る瞳も、この小さくて細い指も、身体も、髪も。全部、全部、独り占めし続けたかった。君のことを、手離したくなんかなかった」
私は、今にも大声で泣いてしまいそうだった。両手で口を覆い、それでもダメだと思って、手の甲を思いっきり噛んだ。
辛い。苦しい。哀しい。そんな言葉だけじゃとても表せない。
既にこんなに苦しいというのに、未来の私はどうやって乗り越えた? もっと、もっと辛いであろうお兄さんは、一体、どれだけ一人でたくさんのものを抱えて苦しんできたの?
分からない。分からない。これは、本で読んだって、未来を知っていたって、計り知れないものだ。私は、この計り知れないような大きな痛みを負うことを知りながら、この先の未来へ進んでいくんだ。
「……夏帆、泣かないで」
「泣いてないよ」
「嘘ばっかり。そんなに目真っ赤にしてるのに」
可愛い顔が台無しだ、と言ったお兄さんの両親指が、私の頬から涙をすくう。私は、噛んでいた右手を膝の上に下ろす。手の甲には、赤く、内側から血が滲むような歯型が出来ていた。