もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
「ちょっと目が痛かっただけだもん。泣いてないよ」
私は左手でぐっと涙を拭い、口角を上げた。それと同時に右手の甲の歯型は、お兄さんに見えないようにと手のひらを上に返して隠した。
「ええ、本当に?」
「うん、本当だよ」
「それじゃあ、夏帆の可愛い目に何か悪いものが入ってないか見てあげないと」
「えっ!」
お兄さんが私の顔を両手で包むようにして、自分の方へと向ける。二人見つめ合うような状態になり、私の頬はだんだんと熱くなってきた。
「お、お兄さん、近い近い」
「だって痛いんでしょ? 何か入ってたらどうするの」
お兄さんは右の口角だけを高く上げて、ニヤリ、と笑った。この時、やっと私は、お兄さんは私のついた嘘に気がついているということに気づいた。
「もう!嘘!嘘!何も目に入ってないからやめて!」
私と拳ひとつ分程しか空間のない私とお兄さんの顔と顔の間。私は、恥ずかしさから勢いよく顔を離し、両手で顔を覆った。すると、そんな私の隣からは「あはは」というお兄さんの笑い声が聞こえてくる。
あ、お兄さんが笑ってる。顔を覆っているけれど、お兄さんが大きく口を開けて楽しそうにしている様子が目に浮かんだ。