もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
「あと、八百屋のおじさんに食べ物ねだって困らせるなよって」
「ちょっと、待ってお兄さん!ミケタロウの事ばっかり!そんなにミケタロウが好きですか!」
ミケタロウへの伝言を次々と並べるお兄さんに、私はつい突っ掛かった。ミケタロウに会いに行ったあの日といい、お兄さんは私よりもミケタロウの方が大事だというのか。
あまりにもミケタロウを可愛がりすぎているお兄さんに、私は少しだけつまらなくなって、ぷくっと頬に空気を溜め込んだ。
私は怒っているぞ、とお兄さんにアピールをしてみたけれど、お兄さんは謝るどころか私を面白がって笑っているようだった。
やっぱり、楽しそうに笑っているお兄さんを見れば、怒っていたことも、不安も、悲しみも、全部なくなってしまう。もう、ミケタロウに嫉妬してしまっていたことなんて忘れてしまいそうだった。
それから、やっぱり私もお兄さんも何でもないような会話をしながら歩き続けていた。
虫がいるとか、風が気持ちいいとか、何が食べたいとか、本当に、何でもない他愛もない話ばかり。
明日、こうしてお兄さんと他愛もない話したり、笑ったり、ふざけ合ったりした記憶がなくなる。それが、未だに信じられない。本当に、この記憶たちは無くなってしまうのだろうか。