もう二度と昇らない太陽を探す向日葵

「嘘だ、嘘だ!」

「え、なに? まさか課題を写す写さない以前にノート忘れちゃったの?」

 呆れた、と言わんばかりの顔で私のことを見ている成美ちゃん。見事私のしでかしてしまった事を言い当てて見せた成美ちゃんに感心したあと、私は大きくため息をついた。

「そんなぁ」

 こんな事ってあるのか。そう思い、頭を抱えた。その時、ちょうどおでこあたりに当たった人差し指の先に、さっき走ったせいで浮かび上がったのであろう汗がのった。

 私は、ハンカチを取り出そうとカバンの中を再び探った。その後、ポケットにも手を突っ込む。しかし、ハンカチも無かった。

「あ」

 そうか。ここで無くしたハンカチを拾ってくれるのが転校生だったんだよね。

 つい、忘れかけていた未来。私は、それを思い出すと少しだけ落ち着いた。お気に入りの向日葵柄のハンカチを無くしたなんてことになれば、私は泣いていたかもしれない。

 見つかる、と分かっている私は、ひとまず深呼吸をして机に顔を伏せた。

「ちょっと、夏帆。課題どうするの」

 机に顔を伏せ、今にも寝てしまいそうなくらい身体をだらんとさせている私の背中を、シャープペンシルの反対側でつんつんと突いてくる成美ちゃん。

 私は成美ちゃんに「諦める」と一言だけ伝えると、ゆっくり瞼を閉じた。

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