もう二度と昇らない太陽を探す向日葵

 私の姿を見つけた成美ちゃんが早歩きでこちらへと駆け寄ってくる。そして「あ」と、何かを思い出したかのように声を出した。

「そう言えば、さっき、職員室の前の落し物箱に夏帆のに似てるハンカチ入ってたよ。向日葵柄のやつ」

「あ、本当? ありがとう」

 どくん、と胸が鳴った。

 あの本に書かれていた〝未来〟が、こうしてひとつずつ〝現在〟になる。そして〝過去〟に移り変わるんだ。あまりにも早い時の流れに、私は少しだけ戸惑ってしまった。

「成美ちゃん、私、ちょっと落し物箱見てくるね」

「うん。分かった。田口先生帰ったらすぐに課題の回収して話するって言ってたから早く帰って来ないと怒られちゃうからね」

「うん、大丈夫!すぐ戻るね!」

 成美ちゃんに手を振ると、私はすぐに職員室前にある落し物箱を目指した。

 落し物箱に入れられている私のハンカチを取り、私は、その後でお兄さんに……転校生に、会いに行く。


 一歩、一歩、あの落し物箱へと進んでいく。職員室前の廊下を職員室に向かって歩いていると、あのオレンジ色の落し物箱が見えてきた。

 少しずつ近くなる落し物箱。ついに目の前にやって来ると、私はその箱の中を覗き込んだ。そこには、成美ちゃんの言った通り、私のハンカチが一枚の用紙とともに置かれている。

 私は、その用紙とハンカチを手に取った。

 《玄関 2年2組 陽本蒼》

 落し物を見つけた場所、クラス、名前。その三つが書かれているその用紙をぎゅっと握りしめ、私は教室へと戻った。

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