もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
志之と別れた私は、細い小道を一人軽い足取りで歩いていく。細い小道から、いつものように駅前の大通りに出る。すると、あのお兄さんの後ろ姿を見つけた。
昨日と同じ白いTシャツに、デニムのジーンズ。そして、やはり足は裸足だ。
足が裸足で目立つからなのか何なのか、後ろ姿でもすぐにお兄さんが目に入った私は、少しだけ早歩きをしてお兄さんの側へと向かった。
「お兄さん!」
「うわあっ、びっくりした」
「あはは」
物静かそうなお兄さんが、背後から声をかけた瞬間にびくりと体を反応させて驚いた。その姿が何だか面白くて、私は何の遠慮もなく声を出して笑ってしまった。
「びっくりしました?」
前髪の向こう側を覗こうとしながら私がそう言うと、お兄さんは「そりゃあ、びっくりするよ」と言って笑い、さりげなくそっぽを向いた。
「昨日も思ってたんですけど、お兄さん、前髪長いですね」
「え? ああ、うん。切る予定だったんだけど、その必要が無くなったからね」
「ええ、絶対に切った方がいいですよ。視界も明るくなるし、人にぶつかったりする心配もなくなります。それに、その前髪だとすごく暗そうに見えますよ」
お兄さんが前髪を切る必要が無くなったのは何故だか分からないけれど、絶対に前髪を切った方がメリットが多いのではないかと思った私は、殆ど初対面であるこのお兄さんに、自分の思った意見をど直球に伝えてしまった。