もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
でも、確かに彼がホームレスである可能性は高い。いつも同じ服装をしていて、靴も履いていない。
考えれば考えるほど、お兄さんがホームレスではないかという説が濃厚になっていく。私は、複雑な心境で眉間に皺を寄せた。
「はは、まさか。ちょっと説明しづらいけど、ホームレスではないよ」
そんな複雑な顔しないで、と言って笑ったお兄さんの口角がくっと上がった。
長い前髪に隠れた、お兄さんの綺麗な瞳。そのふたつの瞳を見せて笑っているお兄さんをしっかり見てみたいな、なんて、少しの好奇心と、純粋な気持ち。そのふたつが恥ずかしさや不安より勝ってしまった私は、首を縦に振った。
「よし。分かりました。お兄さん。切りましょう、その長い前髪」
「うん。よろしく頼むよ」
「私、筆箱にハサミ入ってるので、少し歩いたところにある公園で切ってあげます」
「はーい。よろしく」
呑気に返事をしたお兄さんを引き連れ、私は少し歩いたところにある公園へとやって来た。
公園にあるゴミ箱をお兄さんの顔の下に置いて、切った後の髪が落ちないようにする。私は「いきますよ」と一言お兄さんに言った後、前髪にハサミを入れた。
ざくり、と、お兄さんの前髪がゴミ箱の中へと落ちていく。
ざく、ざく、と躊躇することなく前髪を切る。普段から自分の前髪は自分で切り揃えている私は、少しだけ前髪を切ることに関しては自信があった。上手くいくようにと願いながら、真剣にお兄さんの前髪にハサミを入れていった。