もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
2.未来が記された本


『私は、向日葵柄のハンカチを拾い、律儀に職員室前の落し物箱に入れてくれた彼の元を訪ねた。

 彼のクラスは、1組だった私の教室の隣にある2組。私は、お昼休みにご飯を食べ終えたあとで2組の前へ行き、中を覗き込む。

 一番後ろの窓際の席。そこで、窓の外を眺めている彼を見つけた。

 2組で仲の良かった友達に、私は彼を呼んでほしいと頼んだ。友達は快くそれを受け入れてくれたけれど、その友達に呼ばれた彼は、少し戸惑っていた。足取りも重そうで、ひょっとしたら、わざわざ呼んだ私を迷惑だと感じていたかもしれない。


 私は、廊下までやって来てくれた彼にハンカチを見せると「ありがとう」とお礼を言った。すると、噂どおり少しだけ暗そうなイメージをもつ彼は「ううん、いいよ」とだけ言って首を振る。それ以降は何も言わず、ただ私の様子を伺っていた。

 殆んど前髪に隠れてしまっている瞳が、時々顔を出す。その度に、早く教室戻りたいんだけど、と言っているように見えた。

 元々、誰とでも分け隔てなく話してしまう性格で、その上、どうしてか他の人よりも彼には特別興味が湧いていた私は、このまま彼を教室に戻す訳にはいかない。彼のことを少しだけ引き止めたい、と考えた。

 そして、私は彼を引き止めるために「ねえ、前髪長すぎない? その前髪だと、すごく暗く見えるよ」と、本音だけれど、とても失礼な発言をしてしまった。

 彼いわく、ここで彼の中の私の第一印象は『失礼な人』になってしまったらしい。

 でも、そんな、彼にとって『失礼な人』でしかないはずだった私も、私にとってただの『暗そうな隣のクラスの転校生』だった彼も。ここから、彼にとっても私にとっても『気になる人』になっていく。

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