もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
彼と私は、特別な感情を抱きながらいつも一緒にいるようになった。
〝暗そうな隣のクラスの転校生〟から〝気になる人〟になり、他の人とは違う〝特別な人〟へ。私達は〝ただの知り合い〟なのか〝友達〟なのか、それとも他の何かか。
私達の関係性も、私自身の抱く感情も、しばらくはよく分からないままだった。
部活に入っていなかった彼は、美術部だった私の部活が終わるのをいつも待っていてくれた。そして帰りには、私と、美術部の友達と、彼と、3人で並んで帰ることが日課になっていた。だけど、何故か時々、美術部の友達が気を利かせて私たちを2人にしてくれることもあった。
最初は暗くてきつい印象も受けたけれど、本当は誰よりも優しい彼。そんな彼は、私が「寂しい」と言えばいつも側にいてくれたし、私が「悲しい」と言って泣けば、優しく私の涙を拭ってくれる。そんな人だった。
小学校低学年の頃に父を亡くし、それ以来、母が働きっぱなしで殆んど家にはいなかった。そんな私の一人でいるはずの時間を、とても楽しくて、幸せで、充実した時間にしてくれるのが〝彼〟という存在だった。
そんな風な日々を過ごしていくうちに、私にとって彼は『好きな人』なんだと気づいてしまった。
出会ってから時間なんて、全然かからなかった。多分、一ヶ月も経っていなかったと思う。だけど、私は彼のことが好きだと思った。いや、もう気づいた時には大好きだった。だから、この自分の気持ちに気づいた瞬間に、私は、突然彼への想いを抑えられなくなってしまった。どうしたらいいのか分からなくなるくらい苦しくて、でも、とても幸せだったのを覚えている。
この気持ちを、彼に伝えたい。
私は、強くそう思った。彼の気持ちを確かめたいわけでも、彼とどうなりたいとか、そういうわけでもなんでもなかったけれど、ただ、溢れんばかりのこの気持ちを彼に伝えたかった。
ただただ、その時の私は、私が抱くこの大きな気持ちを彼に知って欲しくて、仕方がなかった。』