もう二度と昇らない太陽を探す向日葵

「おお、宮崎。今日もコンクールの絵、書きに来たのか?」

「あ、本木(モトキ)先生。えっと、今日はちょっと忘れ物取りに来ただけです」

 突然、背後からかけられた声。私は、急いで本をカバンの中に突っ込むと振り返った。そこには、1組の担任で美術部の顧問でもある本木先生がいた。

 すらりと背が高く、丸メガネが似合う本木先生は、いかにも美術部顧問というような落ち着いた雰囲気だ。

「そうかそうか。今、外、とんでもなく暑いから気をつけて帰るんだぞ」

「あ、はい」

 優しく笑った本木先生が、数冊のノートを片手に職員室のドアへ手を掛けた。

「あ、本木先生!」

 私は、先生の後ろ姿を見ながら、ふと先生に確かめてみたい事を思いついた。

 私の声に、先生が振り向く。振り向いた先生はいつもの優しい笑顔で「どうした?」と言って私を見た。


「あ、えっと……もしかして、夏休み明けに転校生とか入ってきますか?」

 騒ついて落ち着かない胸の鼓動。その鼓動に気づかないふりをして、いつもと変わらない私を意識した。そんな私を見る先生の目は、次第に薄くなり、私のことをとても不審そうな目で見た。

「おいおい、宮崎。一体、その情報はどこで仕入れたんだ?」

「えっと……あ、この間、偶然見かけたんです!見覚えのない男の子が学校に来てるところ」

 咄嗟に出た、言い逃れるための言葉。発した瞬間に、これは失敗したと思った。

 ひょっとしたら既に転校前の挨拶に来ているのではないかと思いつき、そう発したのはいいけれど、もし、転校生がたったの一度も学校へ挨拶に来ていないとしたら、どう言い訳したって逃れられなくなる。

 そうなってしまったら、一体、私は何と言って話を誤魔化せばいいだろうか。

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