もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
私は、そのカードを両手で受け取ると、まずは名前に目を通した。
「ヒノモトアオイ?」
────〝陽本蒼〟。
そう表記されている名前を読み上げた。すると、お兄さんは、多分、今までで一番優しい表情で笑った。
私は、次にカードの上あたりを見た。
「お兄さん、大学生なんですね」
電車で南へ4駅分のところにある県立大学。その大学の名前がカードの上に書かれてある。
やはり、お兄さんは大学生だったようだ。
「そうだよ。永遠の大学生」
「永遠の大学生?」
私は、お兄さんの返答にくすりと笑った。
私も、出来ることなら永遠の高校生でいたい。それと同じように、きっと、お兄さんも永遠の大学生でいたいのだろうな。なんて、私は勝手に解釈した。
お兄さんに向けていた視線を、手元にある学生証へと再び落とす。それとほぼ同時に、お兄さんは私の手から学生証を取り上げた。
お兄さんの手により、視界から学生証が消えていった。最後の一瞬、生年月日部分に目を向ける。すると、お兄さんの生年月日は、〝2000年12月21日〟と書かれていた。
「お兄さん、ちょっと待って」
「ん? なに?」
お兄さんは変わらず笑顔まま、学生証をポケットにしまってしまった。
「お兄さん、大学生なんだよね?」
「うん。そう。大学三回生。さっき見せた学生証がその証拠だよ」
お兄さんの表情は、ひとつも変わらない。
確かに、そうだ。その通りだ。県大の学生証を持っているのだから、お兄さんは大学生で間違いない。
でも、あの学生証に書かれていた生年月日は明らかにおかしかった。そのことに、私は気づいてしまった。