もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
2000年12月21日と書かれていた、大学生だというお兄さんの生年月日。
おかしなことに、そのお兄さんの生まれた年は、私が生まれた年と同じ年だった。
私が生まれたのは、2000年8月31日。
大学生であるはずのお兄さんと、高校2年生の私が、どうして同じ年に生まれているというのだろう。
ただの偶然? 見間違い? いや、こんな事は絶対にあるはずがないし、ちゃんと私はこの目で見た。絶対に見間違いでもない。
これは一体、どういうことなのだろう。私は、頭をフルに回転させて考えた。
お兄さんがもし、本当に2000年に生まれたとするなら、私と同じ高校2年生なはず。だけど、お兄さんはちゃんと大学の学生証を持っている。
私は留年しているわけでも何でもないのだから、同い年なら、同じ高校生であるはず。
考えても考えても答えなんて出てくるはずもなく、私の思考は解けない問題の無限ループに陥っていた。
「それよりさ」
「え?」
しばらく考え込んでいた私に、突然お兄さんが声をかけてきた。完全に自分の世界の中に入り込み、解けない問題を解こうとし続けていた私は、お兄さんの声でやっと我に返った。
「俺さ、この辺りで本を無くしたんだけど……君、知らない?」
探しても探しても見当たらなくて、と付け足し言ったお兄さんに、私はギクリとした。
私がこの辺りで拾った、私の未来が記された本。あれは、このお兄さんの本だったのか。
私の未来が記されていた、不思議な本。ついに、その持ち主が現れた。いや、本当は、見つけた時から私のすぐそばにいたらしい。
私は、持ち主を見つけたら必ず返そうと決めていた。だから、ずっとこの本をカバンに入れ持ち歩いていたし、栞も挟まずに内容に目を通してきた。
────だけど。
「知らないです」
気づけば私は、小さくそう呟くと、首を横に振っていた。
持ち主に返そう。そう決めていた。ちゃんと、返すつもりだった。だけど、本の内容を知ってしまった今、私はその先を読まずにはいられなくて、思わず首を横に振ってしまった。
私は「そっか」と、小さく呟いたお兄さんに対して大きな罪悪感を抱き、視線を足元に落とした。