もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
「ううん。違う。俺は、彼女にとって良くない存在だった。太陽になんてなれないし、なってはいけない人間だ」
お兄さんは、両手で持っているホワイトモカのカップへと視線を落として、切なげな弱い声でそう言った。
「お兄さん?」
「あ、ああ。話が随分それちゃったね。ごめん。他の話に変えよう。他に何か聞きたい事は?」
切なげな表情だったはずのお兄さんの表情。それが、気づけばいつもの笑顔に戻っていた。
本当は、お兄さんの言った言葉の真意を知りたい。どうして、時々お兄さんの瞳の奥が切なく揺れるのか。その理由が知りたい。だけど、またお兄さんの切なげな瞳を見るのが嫌で、怖くて、私はどうしても聞けなかった。
「それじゃあ、次は、好きなもの。お兄さんの、好きな食べ物ってなに?」
「え? そんな事でいいの?」
私の問いに、お兄さんは目を丸くしながらそう聞いた。
「それがいいの」
私がそう答えると、笑って頷いたお兄さんが口を開いた。
「甘いもの。パフェとかケーキとかプリンとか、好きでよく食べてた」
「本当に甘党なんだ」
「うん。正確には、〝甘党になった〟んだけどね」
「甘党に、なった?」
「うん。そうそう。最初は甘いもの苦手だったんだけど、高校二年生か三年生くらいの頃に食べられるようになった。今では、甘いものには目が無いくらいなんだけどね」