もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
翌日。私は、いつものようにお兄さんに会いに行き、この辺りでは一番大きな公園のベンチに腰掛け話をしていた。
「夏帆、ずっと髪短いの?」
お兄さんが、私の顎あたりまでしかない髪に触れた。するっと、すぐにお兄さんの指から解けていく髪が私の顎あたりに触れるのがこそばゆい。
「うん。ずっと、中学生の頃からこのくらいかな」
「そうなんだ。すごく似合ってるな、ってずっと思ってた」
私の髪から指先を離したお兄さんの言葉に、私は恥ずかしくて少しだけ視線を逸らした。
「あ、照れちゃった?」
少し意地悪な笑みを浮かべたお兄さんが私の視界に顔を覗かせた。
「だって、お兄さんが急にそんなこと言うから!どうしてそんな恥ずかしいこと平気で言えるのかな」
夏の暑さからか、それともお兄さんのせいか。段々と火照ってきた顔を両手で仰ぎながらそう返した。
「お兄さん、女慣れしてそう」
ついでに、小さくそう付け足すと、お兄さんは声を出して笑った。
「それは心外だな。似合ってるからそう言っただけだし、誰にでも言うわけじゃないよ」
隣から再び伸びてきた指先が私の髪をくしゃくしゃと撫でた。私は、お兄さんの指が髪に触れたことでまたさらに体温を上げた気がした。
撫でる指先が優しくて、私の中でまた〝好き〟が溢れ出しそうになる。