もう二度と昇らない太陽を探す向日葵

「それに、言いたいと思ったことは、そう思った時に伝えないと。一生伝わらなくて後悔するの、もう嫌だから」

 髪を撫でる指先が、また更に優しくなる。

 笑っているはずのお兄さんの瞳の奥が、ほんの少し揺れたような気がして、私はお兄さんの中にまだ何か大きなものが隠れているんじゃないかと感じた。


「あ、それより。明日は学校行くの?」

 聞きたい。でも、聞けない。お兄さんが時々悲しい瞳をする理由を聞きたくて一人葛藤していた私。そんな私が口を開く前に、お兄さんはいつも通りの表情で口を開いた。

「えっと、明日は、午前中だけ行こうかなと思ってる」

「そっか。それじゃあ、明日会えるのは午後か」

 寂しいな、なんて冗談っぽく言って戯けるお兄さんに、私はまた聞きだすチャンスを逃してしまった。


 知りたい。お兄さんの事を、知りたい。全部、全部、知らないことを全て知り尽くして、全てを分かち合いたい。

 そんな貪欲な気持ちが生まれる反面、全てを知ることに、少なからず恐怖も感じていた。


 だけど、やっぱり、知りたい。


「明日も、待ってるから」


 現在の私にとっても、未来の私にとっても特別で大切な人だから。私は、どんなことだって、彼の全てを受け入れて生きていきたい。

 そう、強く、強く、思った。


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