もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
お兄さんのことを知る。そう決めた私は、数日後、またお兄さんの落とした本を開いた。前回読み進めたページを開き、その次のページから、ゆっくり、丁寧に目を通し始めた。
『毎日を隣で笑いながら過ごし、高校を無事卒業した私と彼は、それぞれ別の大学へと進学した。私は県外の美術大学へ。彼は、電車で4駅程の所にある県立大学へ。
お互い別々の大学へ進学して、私と彼は高校生の時よりもずっと忙しい毎日を送っていた。それでも、私達はうまくやっていた。いや、少なくとも私はうまくやっていたつもりだった。
できるだけ毎日連絡は取るようにしていたし、二週間に一度くらいの定期で会うようにもしていた。もし都合がつかなくて会えなくたって、くだらない話や、お互いの近状報告はメッセージでしていた。だから、私たちは大丈夫だと思っていた。ずっと一緒に居られる。そういう自信が、何故か私にはあった。
しかし、大学二回生になって間もない頃。突然、彼から「別れよう」というメッセージが来た。
その突然すぎるメッセージを、私は信じられなかった。何かの冗談だろうと思った。もし、彼が冗談だと言ったなら、こんな冗談はやめてよ。と言って怒ってやろう。そう思った私は、そのメッセージが来た日の大学帰り、彼の大学へと押しかけた。
彼の大学の敷地内に入ると偶然会った、高校からの友人。私は、その友人に彼はどこにいるのかと尋ねた。しかし、彼女から返ってきたのは「しばらく休んでて単位が危ないらしいよ。聞いてないの?」という言葉。いつから休んでいるのかと聞くと、彼女は顎に手を当てて悩んだ後「はっきりとは覚えてないけど今年に入ってからは全然見てないかも」と言った。
そんなこと、私は全く知らなかった。知るはずもなかった。私達は、最低でもお互いに一日に一通はメッセージのやり取りをしていたのに、彼は、そんな事を全く言っていなかった。
それに、彼がしばらく大学を休んでいると知ったこの日から二週間ほど前にも私は彼と会っていた。
都合が悪かったのか、彼はその日長時間は一緒に居られないと言っていた。だから、たった数時間話しただけだけれど、その時も、彼はいつもと変わらなかったと思う。強いて言うのなら、彼の顔色が少し悪く、よく咳をしていたということ。心配する私に彼は「少し体調が悪いだけ」と言って笑っていたし、本当に、いつもと違うところなんて無かった。だから私は、まったく気づきもしなかった。