もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
ついに涙を堪えきれなくなってしまった私は「好き」「別れたくない」「どうして」と、同じ単語を繰り返し彼に訴え続けた。
彼は黙り込み、私は泣きじゃくり、別れたくないんだと繰り返す。数十分程それを続けていると、泣きじゃくる私をただ見ていた彼の方が涙を流していたことに私は気づいた。
涙を流していた彼を見て、私ははっと我に返った。彼の目は既に真っ赤で、頬にはいくつかの道筋が出来ていた。
彼は、いつから涙を流していたのだろう。
その時の私は、突然冷静になると、そんなことを考えていた。
どうして、別れを告げた側の彼が泣いているのだろう。どうして、彼の方がそんなに苦しい表情をしているのだろう。
そんな疑問を抱きながら、私は静かに彼の手を握った。彼の細い指先は、微かに震えていた。
しばらくすると、静かに涙を流していたはずの彼が少しずつ声を漏らし始めた。その声は、だんだんと大きくなり、気づけば、彼は数分前の私のように泣きじゃくり始める。
この時、私は彼の一度目の涙を見た。
初めて見た彼の涙は、物凄い勢いで彼の頬を流れ落ちる。大きく、重い涙だと、私はそんな風に感じた。
彼はしばらく子供のように泣きじゃくり、私は、そんな彼の手を強く握り続ける。すると、段々と落ち着いたらしい彼は、ゆっくり、ゆっくりと慎重に口を開いた。
「運命って、本当にあると思う?」
泣きじゃくった後、彼が発した第一声。
運命はあるのか、と、普段非現実的なものは何ひとつ信じなかった彼の口から、こんな言葉が出てくるとは思わなかった。私は、少しだけ考えた後、首を縦に振って「うん」と答えた。
私の答えに、彼は少しだけ口角を上げて笑う。そして「それなら、俺の運命は今世紀で一番に残酷で、一番に美しいね」と言った。