もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
私は、彼の言葉が理解できず、ただ彼の目を見つめていた。この時、彼の言った言葉の意味を知ったのは、このすぐ後だった。
「今まで隠してきたこと、全部隠さず話すから。だから、全てを聞いた後は、どうか俺の我儘を最後に一つだけ聞いてほしい」
そう言うと彼は、ゆっくり、ゆっくり、丁寧に言葉を選びながら、私へ全てを話してくれた。
彼は、心筋症という心臓の病を抱えていた。心筋症というのは、心臓を動かす心筋に異常が起こり心機能の低下を起こす病気だという。発病する原因ははっきりと特定されておらず、彼の場合は祖母が心筋症だったことから遺伝性ではないかと言われているらしい。難病にも指定されている心筋症は、ゆっくり進行していく人もいれば、突然症状が悪化して死んでしまう人もいると彼は私に説明した。
彼は、私に出会った高校2年生の頃には既に心筋症だと診断されていたらしい。診断されたのは高校に入学したての頃で、心筋症だという事実にショックを受けた彼は、それからしばらく家に引きこもるようになっていたという。
そんな彼が私の住む町へ引っ越してきたのは、引きこもり心を塞ぎがちになっていた彼をまた学校に戻すことや、大きな病院があるというのが理由だったらしい。引越しを決断したのは家族のようで、彼は、この町に来てからずっと、このドナーを待っているんだと言った。