もう二度と昇らない太陽を探す向日葵

 彼が、私に最後に言った我儘。

 それは、私に「幸せになってほしい」というものだった。

「幸せになって欲しいと心から思ってる。だから、俺とは別れて欲しい。そして、もう二度と会わないでいよう」

 彼は、私にそう提案した。

 その彼の提案に、悲しいという気持ちよりも先に苛立ちが走った私は、彼に今までで一番に怒ったのを覚えている。

 途中から、悔しさとか悲しさ、苦しさとかやるせなさが涙と共に湧き上がってきた。まるで蛇口から出る水みたいに止め処なく涙を零しながら、私は彼に怒りをぶつけた。

 別れるわけがない。私にとっての幸せはあなただから。あなたが幸せにしてよ。と、我儘なことを怒鳴りつけるようにして、私は大泣きしながら言い放った。

 そんな私を、彼はいつもより少しだけ下手くそな笑顔で宥めていた。


「絶対に、離れない。私は、ここで幸せになるから」


 彼の腕に包まれながら、彼の胸元の服をぎゅっと強く掴んだ。

 この時、私も彼も涙を流していた。どうしてこうも運命は残酷なのか、と思わずにはいられなかった。


 だけど、この日、私はひとつの決断をした。

 私は、彼に自分の生涯を捧げよう。そして、いつまでも彼に寄り添おう、と』




< 47 / 125 >

この作品をシェア

pagetop