もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
───バサッ。
私の手元にあったはずの本が、私の足元に音を立てて落ちた。ベッドに腰をかけたまま、私はその本を持ち上げると、そのまましばらくぼうっとしていた。
この本は、本当に私の未来を記している? これが、本当に私の未来?
もし、本当にそうだとするなら。
この本に出てくる〝彼〟がお兄さんだとするなら。そうであるならば、お兄さんは心筋症という難病で死んでしまうかもしれないということ……?
「嘘だ。嘘だ。こんなの、私の未来じゃない」
あり得ない。そんな未来、あるわけない。あってはいけない。
もう既にお兄さんに心を惹かれてしまっている私は、急にこの本の内容を信じられなくなった。いや、信じたくないと思いはじめてしまったのかもしれない。
だけど、そう思う反面、この本に書いてあることはあまりにも当たりすぎていて、今更、これが私の未来じゃないと思えるような理由も見つからなかった。
私は、お兄さんに会いたい。お兄さんを助けないと。と、強く思った。
とてつもなく大きな焦りと不安と使命感に駆られた私は、側にあったカバンに本を突っ込み、それを片手に家を飛び出した。
未来を知っていたところで、原因の特定すら不明の難病。私にどうにか出来ることではないのかもしれない。だけど、何か、微力でも出来ることはないか。私は、それをひたすら考えながら走り続けた。
お兄さんに消えて欲しくない。お兄さんとずっと、ずっと一緒にいたい。
だから、どうか、お兄さん。これから私が聞く質問に、どうか、どうか、首を横に振って欲しい。
お願いだから、あの本の中に書かれている内容が私の未来だなんて、ただの勘違いなんだと言って笑ってほしい。