もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
「ねえ、夏帆」
お兄さんが、いつもと変わらない優しい眼差しで私を見る。
どうか、お願い。そのまま優しい表情のまま〝そんなわけないでしょ〟と言って欲しい。
「夏帆は、何か未来でも見てきたの?」
「え……?」
私の願いと希望は虚しくも消えていった。まさか、本当にあの本の内容が〝未来〟だというのか。
「何か、隠してるんじゃない?」
真っ直ぐ私の瞳を捉えてそう言ったお兄さんに、私はドキッとした。それは、ときめきでも他のなんでもなく、罪悪感のような心臓の鼓動だった。
「何も、隠してなんかない」
持ち手部分を右腕にかけていたカバン。その中身がお兄さんに見えてしまわないよう、私は一度そのカバンの持ち手を腕から外した。そして、左手で受け取ろうとすると、私の左手からするりとカバンが落ちていった。
「あっ」
私の手から落ちていったカバンがコンクリートの地面に軽くバウンドすると、その中身がバラバラと地面に散らばっていく。
もちろん、そのカバンの中に入れていたあの本もカバンの中から顔を出していた。
「やっぱり」
お兄さんは、そう言うと私のカバンの中に散らばった荷物を直し、それを左手に。そして、顔を出していたあの本を右手に持った。
「……ごめんなさい」
お兄さんからカバンを受け取った私は、嘘をついてしまったことや、勝手に中身を読んでしまったこと。何より、お兄さんを騙していたという罪悪感から足元に視線を落として、ぎゅっと瞼を閉じた。