もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
5.物語の結末
「───ほ、夏帆」
「え?」
ぼんやりとしていた意識が急に現実に戻った。はっきりとした視界には、完成間近の一枚の絵と、その向こう側から私を覗き込んでいる志之がいた。
「どうしたんだよ。ぼうっとして」
何回も呼んでたけど、と志之に言われて初めて、私は志之に何度も呼ばれていたことも、それだけ呼ばれても気づかないほど自分がぼうっとしていたことにも、やっと気がついた。
「ごめんごめん、ちょっと考え事してた。何? 何かあった?」
お兄さんに本の続きを読んで欲しいと言われてから早くも一週間が経とうとしていたが、あの本の続きは一切読んでいない。私は、続きを読むことをとても躊躇っていた。
あの本を読み終えて、全てを知ったその時、私のそばにお兄さんはいてくれるのだろうか。私の未来は、どうなるのだろうか。私は、その未来を受け入れて生きていけるだろうか。
色んなことをぐだぐだと考えてしまい、結局読むのを先送りにする。そんな日々を何日も続けていた私は、こんな風にいつも考え事をしていて、心ここに在らずという感じだった。
「いや、向日葵の絵、ちょっと変えたんだと思って」
志之が、私の前にある向日葵の絵を指差した。先週、既に完成ともいえるような状態だった私の絵。私は、今日、その完成間近の絵の上に筆を置いたのだった。