もう二度と昇らない太陽を探す向日葵

 澄み渡る青空と、キラキラと輝く真夏の太陽。それから、一面に広がっているけれど、どれも一点だけ。太陽だけを真っ直ぐ見上げている向日葵。

 そんな絵を先週に書き上げると、その絵に私は「太陽と向日葵」というベタなタイトルをつけた。先週までは、そのままコンクールに出すつもりだった。

 だけど今日、私はここに来て改めて絵を見てみると、このままでは何だか違うような気がした。

 気付けば私は、その絵に白と灰色の絵の具を付け足していた。

「太陽は?」

 志之が問いかけた。志之の視線の先には、厚く、大きく広がる雲。先週まで、そこにはキラキラ輝く太陽があったはずだった。

「消えちゃった」

「消えた?」

 多分、私は下手くそに笑った。そんな私のことを、志之は少しだけ心配そうに見ていた。

「そう。消えた。だからタイトルもね、思い切って変えたんだ」

「変えたの? 明日提出期限だってのに、随分思い切ったな」

「うん。私、これで出す」

 私の目の前にあるこの絵は、私の中のモヤモヤとした心をそのまま表しているようだった。


 お兄さんが消えてしまったら、私はどうすればいいのだろう。

 お兄さんが消えてしまうと知っても、こんなちっぽけな私にどうすることができるのだろう。私は、どうしたらいいのだろう。

 少しだけ先の未来。そのすべて知ったその時、私は一体、何を思うのだろう、と。



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