もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
私は、彼と出会ってから大学二年生の春、彼から別れを告げられたあの日まで、彼が難病を抱えて苦しんでいる事に少しも気付いてあげられなかった。
彼は一見、冷たくて淡白な人に見えるけれど、本当は何よりも他の人のことを一番に考えられるような優しい人だった。そんな優しい彼だから、辛くて苦しい気持ちをいつも抑え込んで私の前では笑ってくれていたのだと思います。
私は、その彼がくれる一番大事で、とても大きなもの。〝優しさ〟に気づけないままで甘え続けていた。
知らず知らずのうちに彼の優しさに甘え続けていく。そうしていくうちに、彼の中の辛いという気持ちや苦しさは、かさを増していたと思う。彼が病を抱えていると知り、大学へ行かず彼の病院へ通い続けたあの日々。何度か吐いてしまった嘘も、彼の苦しみを大きくしただけだったのだと思う。
彼の為についた〝つもり〟だった、私の口から出たいくつもの嘘たち。あの日、どうして私は素直に、正直に、彼へ本当の事を言えなかったのか。あの日、どうして素直に「悲しい」と言えなかったのか。あの日、どうして「大丈夫」だと無理をして笑ったのか。
本当は、辛い日も苦しい日もたくさんあった。嘆きたい日があった。だけど、彼にだけは絶対言えなかった。言ってはいけないと思っていた。
嘘をつくのが下手くそなくせに、彼に心配をかけてはいけないと思い、あの頃の私は嘘ばかり吐いていた。その結果、私は、彼のことを苦しめてしまった。
〝素直さ〟が私の長所のつもりだった。大好きな向日葵のように、真っ直ぐに、素直に生きていきたかった。
あの時の私は、本当に向日葵のように真っ直ぐだったでしょうか。私にはとても、真っ直ぐに生きられていたとは思えません。