もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
お兄さんを想いながら走っている間も、お兄さんを探している間も、私は既に泣いてしまいそうだった。
探して、探して、探して。いつもの駅前、たくさんの人混みの中を私は走り続け、大好きな人を探し出した。
駅前にある時計台の前で、何かを眺めているのか、私に背を向けた状態でぼうっと立っているお兄さん。私は後ろ姿でもすぐに分かった。お兄さんがいる、と。
お兄さんの姿を確認できた事に安心したのか、私の目からは温かいものが溢れ出した。それは、一本の道筋を頬につくり、私の立っているコンクリートへと小さくなって落ちた。
「夏帆」
お兄さんのもとへ、ゆっくり歩いていく。もう、手の届きそうな所まで来た時、お兄さんが振り返った。
私の名前を呼ぶお兄さんの表情は、とても柔らかくて、優しかった。
「お兄さん」
私は、お兄さんの服の袖をぎゅっと握り、お兄さんの胸元に顔を埋めた。そんな私を黙って抱きしめてくれたお兄さんは、しばらくすると私にこう問いかけた。
「俺の話、聞いてくれる?」
段々とひんやりしてくる私の額。お兄さんの身体は、冷たかった。そんなお兄さんのお腹あたりからも、優しい声が響いてきた。
私は、お兄さんから一旦体を離して目を合わせると、大きく頷いた。