もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
私とお兄さんは、人通りの少ない場所で話そうと言ったお兄さんの提案により、公園まで一緒に歩いた。
お兄さんと何度も来たことがあり、前髪を切ってあげたこともある、あの公園。私とお兄さんは、人気の少ない場所にあるベンチに腰をかけた。
「何から話そうかな」
そう言って先に口を開いたお兄さんは、少しだけ口角を上げて笑っている。
「それじゃあ、まず最初に。夏帆も気づいてると思うけど、あの本は、君と俺の未来が記されている。正確に言えば、未来の君が俺との出来事を記した本だということ」
私はもう驚かなかった。本の発行日を見て、物語の最初から未来の私自身が書いたあとがきまで、すべてを読んだ。
全てを知った今では、やっぱりそうなんだ、程度の感覚だった。
「そして、その未来で発行されたはずの本が、どうしてこの時代にあるのか。それは、未来に生きていた俺が持ってきたから」
「未来に生きていた……」
〝生きていた〟というお兄さんの言葉で何となく察しがついた。普通なら、思いつきもしないような事。だけど、今思えば、お兄さんは以前にも自分の事を『永遠の大学生』だと意味深な発言をしていた。
「つまり、俺は、生きていない。死人。この世界には存在していないはずの存在ということ。だけど、たくさんのことを後悔しているから、成仏できずにこうやって未来からやって来た。君に伝えたいことや、君に選んでほしくない未来があったから」