もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
「未来を変える……?」
「そう。夏帆の向日葵柄のハンカチを拾った俺のクラスに、夏帆がお礼を言いに来た。そこが始まりだった。だから、その選択を夏帆に選ばせない為に来た」
「そうしたら、私とお兄さんは……」
「きっと、ただの〝転校生〟と一人の女の子になる。その先、その二つの線が交わることはないだろうね」
私とお兄さんの未来が無くなる。きっと、そういう事がお兄さんは言いたいのだろう。
本を書いた未来の私は、確かに苦しかったと言っていた。苦しくて、悲しくて、やるせなくてどうしようもない日々だった、と記していた。
だけど、それでも〝幸せ〟だったと。今も幸せだと、そう記してもいた。
彼と生きる一瞬がとても尊くて、嬉しくて、幸せでどうしようもない日々。
そう記した未来の私の想いは、本物だと思う。そんな素敵な日々を、私は消したくない。
「……嫌だ」
苦しくても、私は幸せだったんだ。
私は、未来の私から……あの一冊の本からあれだけの溢れ出すような幸せを記すことができた未来の私から、その幸せを奪うことはできない。
「私は、またお兄さんに会いに行く。お兄さんと生きていく未来を消したくない」
お兄さんが変えたいと言った未来は、私にとっては変えたくない大切でかけがえのない未来だ。