もう二度と昇らない太陽を探す向日葵

「ねえ、夏帆」

「何度言ったって、嫌だから」

「夏帆」

「嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!絶対に私はまたお兄さんの事を探すし、会いに行く!絶対に、絶対に、お兄さんと生きる道を選ぶの‼︎」

 私は、子供みたいに首を大きく横に振り、両足をドンドンとバウンドさせた。そんな私の事を、通りかかった親子がおかしな人でも見るかのように見た。

 ああ、そうか。私は今、周りにいる人からは一人でベンチに座っているように見えているのか。

 一人で駄々をこねているように足をバタバタとさせて泣いているなんて、そりゃあ、おかしく思うに決まっている。

 私は、冷静にそんなことを思った。だけど、それを止めなかった。

「絶対に、絶対に、私は変わらない道を選ぶよ。だって、私は……私は、ちゃんと幸せだって、そう言ってるじゃん!」

 お兄さんに、ちゃんと分かってほしい。ちゃんと、伝わってほしい。

「ほら、ちゃんと書いてる!私は、幸せだったって!今も、幸せなんだって!そうやって書いてるじゃない!私が……私自身が、幸せだって!お兄さんに伝わればいいって!そう言ってるじゃない‼︎」

 両手に抱えていた本を広げ、お兄さんに未来の私が幸せだったと記している部分を見せた。私は、何度か苦しかったとも書いていたけれど、絶対にそのあと、幸せだと記している。

「苦しくても、それ以上の幸せをお兄さんはくれてたんだよ。だから、だから……私は頑張れたんじゃない。たくさん苦しい思いして、悲しい思いして、悔しくて、後悔するくらい、お兄さんのことを愛してたんじゃない」

 分かってよ、分かってあげてよ、と言って私はまた大粒の涙を次々と流した。

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