もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
「あ、そうだ!お兄さん、会いに行かない?」
ふと、我ながら良いアイデアを思いついた私は、ベンチからぴょんと立ち上がりお兄さんに提案した。
「え? 誰に?」
「ミケタロウに!」
目をくるりと丸くして私に問うお兄さんに、私は商店街のある方角を指差しながらそう答えた。
こうして私とお兄さんは、ミケタロウに会うために商店街へと歩き出した。
夏休みの商店街は、普通の平日よりも少し賑わっていた。こじんまりとしていたお店やカフェ、喫茶店もここ最近は話題になっているらしくすっかり観光地だ。
そんな賑わっている商店街の隅っこにある目立ってはいない八百屋さん。そこに三毛猫のミケタロウは体をだるんとさせて寝転がっていた。
「ああ!いた!ミケタロウ!」
ミケタロウを見つけた私は、大きな声を出し、お兄さんの手を引くと走り出した。私の足音が耳障りだったのか、ミケタロウは眠たそうにとろんとさせた目を開け、視線を少しだけ上に向けた。
ミケタロウの目の前に腰を下ろし、両手を差し出した。すると、ミケタロウは重たそうな体を起こし、動き出した。
あ、ミケタロウが来てくれる。そう思った私の横を澄ました顔で通り過ぎたミケタロウは、どうしたことかお兄さんの目の前に立ち止まった。
「え」
驚いて声を漏らしたのは、私。
これは、ミケタロウが私を通り過ぎたことに対しての驚きではない。この世に存在していない、普通の人には見えていない、そのはずのお兄さんの足元に擦り寄っているミケタロウの行動に対して驚いたのだ。
お兄さんの足元で、お兄さんの足首辺りに首や顔を擦り付けているミケタロウ。
ああ、そうか。ミケタロウには、お兄さんが見えるんだ。