もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
前向きに考えよう。全て、ポジティブに考えよう。そう、私は必死で笑っていた。そんな私の隣で、お兄さんは眉尻を八の字に下げて複雑そうな顔をしていた。
「もう。お兄さんってば、どうしてそんな顔してるの?」
「いや。本当に、夏帆には助けられてばっかりだなと思ってさ」
冗談っぽく、笑ってお兄さんの肩に指先を当てた。そんな私に同調してお兄さんもいつものように笑ってくれるのではないかと思ったが、お兄さんは意外にも複雑な表情をした。
未来の私がつらくて苦しい想いをしていたことは、あの本を読んで痛いほどに分かった。だけど、お兄さんも、未来の私をとても大事にしてくれていたからこそ、苦しかったはずだ。自ら命を絶つことを選んでしまうほど、苦しくてつらかったんだ。
そう思うと、必死で作り上げていた笑顔がすうっと引いていった。なぜか、私まで泣きそうになってきてしまった。
「夏帆はさ、いつも笑ってた。いつも眩しいくらいの笑顔で隣にいてくれて、それだけで、本当に毎日が幸せだった。ただ息をしていただけの人生が、夏帆がいることで変わったんだ。だけど、俺は、夏帆に何をしてあげられたのかな」
溢れんばかりの愛しさと、切なさが混ざり合う儚い瞳。
出会った頃から、お兄さんの瞳の奥には何かがあるような気がしていた。お兄さんがぐらぐらと瞳を揺らしていたのは、未来の私を思っていたからだということを、私は今、改めて知った。