もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
────8月24日。
この日は、お兄さんと一緒に美味しいショートケーキを食べた。
駅と直結した建物の一階にある、最近巷で話題となっていたケーキ屋さん。そこで買ったケーキを外のベンチに腰掛けながら食べた。お兄さんは美味しいと何度も言いながら食べていて、それがとても嬉しかった。
8月25日。
この日は、お兄さんと私で二度目の向日葵畑へ行った。快晴の空の下を逞しく咲いている向日葵たちは、やっぱり真っ直ぐに、キラキラと輝いている太陽だけを見つめていた。
これが、お兄さんと見る最後の向日葵になるのかもしれない。そう思うと、私は何度も泣きそうになった。
忘れたくなくて。忘れたくなんかなくて、私は、向日葵を眺めているお兄さんばかりを見ていた気がする。そんな私に、お兄さんは「照れるから、そんなに見ないで」なんて言って戯けてみせた。
きっと、彼なりに私のことを笑わせてくれようとしていた。そんな彼の瞳もずっと潤んでいたことに、私は気づいてしまった。だから、泣きそうになるの必死にこらえて私も笑っていた。
8月26日。
お兄さんの案で、お兄さんと私はもう一度一緒にミケタロウに会いに行った。これが恐らく最後になるだろうと言ったお兄さんは、時折切なそうな表情を見せながらミケタロウのことをとても可愛がっていた。
ミケタロウは相変わらずお兄さんに懐いていて、私はやっぱり、お兄さんに可愛がられるミケタロウも、ミケタロウに懐かれているお兄さんも羨ましかった。
お兄さんは何度か「羨ましいでしょ?」と言って、ミケタロウと戯れるところをドヤ顔で自慢してきた。私はそれを羨ましいと認めるのが何だか癪で、「きっといつか私の方が仲良くなるんだから」と意地を張り続けていた。