喧嘩バカップル
いつも通り
いつも通り、彼氏である二階堂(にかいどう)櫂(かい)の家の前まで行って、インターホンを押す。
《あ、璃子ちゃん。
ごめんねー、まだ櫂起きてないの。もう少し待ってくれる?》
櫂のお母さんである、二階堂美樹さんが少し呆れながらそう言ったから、私は家の前で待つことにした。
あー、もう。
櫂っていつも起きるの遅いんだよね…。
これで遅れたら次の罰ゲームは何にしよう。
ジュースはこの前奢ってもらったしクレープも奢らせた。
あとは、なにがあるかな…。
そう考えていると、櫂の家のドアが開いた。
「悪ぃ、遅くなって」
出てきたのは、櫂だった。
「おはよう…てか、お前起きるのおせえわ!」
普通の女子なら
"ううん、全然待ってないよ!そんなこと良いから早くいこう?"って行って彼氏の手を引っ張って彼氏と一緒に走って学校にいくと思う。
でも、私らは違う。
もう、全然違う。
「璃子、お前歩くのおせーんだよ、先いくぞ」
そういって櫂は私をおいてどんどん進んでいく
「いや、待てって!ちょっ…!櫂ってば!!」
そういう私の言葉に耳を傾きもせず、私に背を向けて早歩きする。そう、こいつはこういうやつなんだ。私はどれだけ遅くても、櫂が用意して外に出るまで待つけど櫂は私のことをどうでもいいようにしか、思ってないのだ。
「くっそ!バカ櫂!!うっぜええ!!」
私はそういって櫂に飛び蹴りを食らわす。
「いってえ!何すんだよバカ璃子!
てめえ、あとで覚えてろよ!」
「あーもう!
櫂が早く歩くから私がイラついてるんでしょ?!
バカはどっちだ!!べーっ!!」
私は目元を人差し指で引き下げ、舌を出した。
普通の女子は
"あっかんべーっ!!"と、可愛らしくするけれど私は違うの。私は目元を力一杯引き下げてるの。
だから、
「ぶっふぉおお!!あははっ!ちょっ璃子!
いつも変顔だけどよりいっそう際立って変顔だけど…?!ちょーうける!!」
と、櫂が腹を抱えて笑う。
「いつも変顔?!乙女に対してひでえこというな!?」
私がそういうと、櫂は
「ブフッ!?お前が乙女か?!ならなんだ!
この世のちゃんとした乙女はもう、天使か?!」
と、笑いながら言う。
イラついた私は下駄箱についてからロッカーに鍵を差し込み開けてから、中から上靴を取り出して片方の上靴で櫂の頭を殴った。
「いってえ?!…でもまだ笑える!!
やっべー!!ツボッたわ!!」
どうやらさっきのネタ的な何かが、櫂の中の面白いという坪に入ってしまったらしい。
「櫂はいちいちうるせーよ!もう、置いていくからな!」
私はそういって
「えー、まてよー!!」
という、櫂をほったらかして階段を登った。
あー、ムカツク…。
でも、憎めないんだよ。理由はなんでかって…??
そんなのひとつ。
…好きだからでしょ?
このいつもの茶番も、いつものからかいあいも、アイツが、櫂が好きだからいやとも思わないし、ずっとやってられる。
この、いつも通りが私には、ちょうどいい。