強引専務の甘い手ほどき
コーヒー豆は本店と同じブレンド。
ケーキに合うよう本店のティールームでは濃く淹れてあった。
サイフォンにミネラルウオーターを注ぎコンロにセットし、
コーヒーは本店で淹れるように多めに入れ、
火を止めるタイミングを計り、コーヒーを淹れる。
本店でコーヒーを淹れるいつもの手順。
私にもできる事があってホッとする。
温めたマグカップに注ぎ、少しだけ他のカップに注ぎ味を確かめてから、
専務室に運んだ。
ノックをすると、
「入れ。」と返事がある。
「失礼します。」とトレイを持って入る。
片手を離すとグラグラして、コーヒーが少し溢れる。
アッと小さな声を出すと、
「こぼしたか。不器用だな。」と
「申し訳ありません。淹れなおして来ます。」と立ち止まると、
「じっとしてろ。取りに行く。」と笑った声がする。
私が息を詰めてジッとしていると、
「息まで止めろとは言わなかったが…おかしな奴だな。」
と言って、専務はトレイごと持ってソファーに足を組んで座った。
私は息を吐いて、
「失礼しました。」と部屋を出ようとすると、
「マトモなコーヒーを飲めるようになったな。
朝、出社後や、外出後はコーヒーを淹れてくれ。」とニコリと笑ったので、どきっする。
切れ長の力のある瞳。通った鼻筋。
意思の強そうに結ばれた口元。
短く整えられた黒髪は少しクセがありそうだ。
美鈴さんの評価通りカッコいい…かな。
熱心に書類に目を通している表情は、
かなり不機嫌そうだ。
従兄の石神さんと違って、こっちは躾の行き届いていない大型犬。
ドーベルマンって感じ。
私は黙って頭を下げ、専務室を後にした。
ケーキに合うよう本店のティールームでは濃く淹れてあった。
サイフォンにミネラルウオーターを注ぎコンロにセットし、
コーヒーは本店で淹れるように多めに入れ、
火を止めるタイミングを計り、コーヒーを淹れる。
本店でコーヒーを淹れるいつもの手順。
私にもできる事があってホッとする。
温めたマグカップに注ぎ、少しだけ他のカップに注ぎ味を確かめてから、
専務室に運んだ。
ノックをすると、
「入れ。」と返事がある。
「失礼します。」とトレイを持って入る。
片手を離すとグラグラして、コーヒーが少し溢れる。
アッと小さな声を出すと、
「こぼしたか。不器用だな。」と
「申し訳ありません。淹れなおして来ます。」と立ち止まると、
「じっとしてろ。取りに行く。」と笑った声がする。
私が息を詰めてジッとしていると、
「息まで止めろとは言わなかったが…おかしな奴だな。」
と言って、専務はトレイごと持ってソファーに足を組んで座った。
私は息を吐いて、
「失礼しました。」と部屋を出ようとすると、
「マトモなコーヒーを飲めるようになったな。
朝、出社後や、外出後はコーヒーを淹れてくれ。」とニコリと笑ったので、どきっする。
切れ長の力のある瞳。通った鼻筋。
意思の強そうに結ばれた口元。
短く整えられた黒髪は少しクセがありそうだ。
美鈴さんの評価通りカッコいい…かな。
熱心に書類に目を通している表情は、
かなり不機嫌そうだ。
従兄の石神さんと違って、こっちは躾の行き届いていない大型犬。
ドーベルマンって感じ。
私は黙って頭を下げ、専務室を後にした。