強引専務の甘い手ほどき
退院の許可が出て、
上杉さんの運転する車で病院を後にする。
部屋にキサラギさんと一緒に戻ると、
週に3回お掃除のためにやってくる、
日野の実家のお手伝いさんの三枝(さえぐさ)さんが待っていた。
(私も時折帰りが早いと会って挨拶したりしていた。)
三枝さんは50台半ばの優しいお母さんって感じのふっくらおっとりした人だ。

「お帰りなさい。カエデさん。」とにっこりしてくれる。
「カエデ、日中は三枝さんがいる。
ゆっくりベットで休んでて。」とキサラギさんがにっこりした。

私がキサラギさんを見上げると、
「うーん。
オヤジがカエデの負担を軽くしろって言ってさあ、
三枝さんは平日は毎日いてくれる事になった。
だから、のんびり暮らせばいいよ。」と私の顔を見た。

お手伝いさんのいる暮らし。
驚きだ。

「…よ、よろしくお願いします。」と私が頭を下げると、

「おふたりがご結婚されると聞いて、私も嬉しいです。
カエデさんは妊娠されたそうですね。おめでとうございます。
妊娠中は無理をしないでくださいね。
家の事はお任せください。」とにっこり言ってくれた。

「カエデ、今日は得意先の新年のパーティーに行ってくる。
早く戻るから、良い子にしてろよ。」と私の頭にキスをして玄関から出て行く。

お、お手伝いさんの前ですけどー?

三枝さんは気にしていないようで、リビングに戻りながら、
「ほうじ茶いかがですか?カエデさん。」と私に微笑みかける。

「い、いただきます。て、手を洗ってきます。」と赤い顔をして洗面所に逃げ込んだ。
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