強引専務の甘い手ほどき

春になったら。

バレンタインに合わせて開店された新しい支店は評判が良く、
海沿いにある店舗はオシャレで、カフェからの眺めが良い。
雑誌の取材を受けたり、ワイドショーでも、取り上げてもらえた。
店舗の責任者であるキサラギさんと結城君が並んで微笑む姿がテレビに映り、
私は少し楽しくなった。

いや、君たち外面がいいね。
いつものふたりを知っている私達はクスクス笑ってしまう。

2週間後、結城君がキサラギさんと石神さんに連れられて、病室を訪れた。

「カエデ先輩、少しは元気になった?」と私の顔を覗いて、
ケーキの箱を取り出して、そっと箱を開いた。

甘い匂いが心地良い。
私は随分と、元気になったな。

「凄く爽やかな匂いがする。」と私が微笑むと、
「良かった。まだ、食べられないかもって
ちょっと、思ってた。
レモンのムースだよ。
支店の限定品。
カエデ先輩のために作ったんだ。」と結城君はにっこり笑った。

「いただこうかな。」と私が言うと、

キサラギさんがフッと笑って、
「結城が役に立つとは思わなかったな。」と額にシワを寄せてから柔らかく微笑んだ。

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