強引専務の甘い手ほどき
私はガラスのカップに入ったレモン色のムースをひとくち食べる。
レモンの風味と、甘いバニラの香りがとても上品だ。
きっと、このバニラは本店で、シュークリームに使用されている。最高級なもの。

「美味しい。
私の身体の半分はルピナスのケーキで出来てるのかも。」
と私がキサラギさんに笑いかけると、
「じゃあ、仕方ない。
結城に頑張って、ルピナスのケーキを作ってもらうか。」とくすんと笑った。

「俺はこれからも、カエデ先輩に俺のケーキを食べて欲しい。」と結城君が私に笑いかける。

「それって誰かさんがヤキモチをヤキモチを妬きそうだけど…」と石神さんが笑うと、
「俺はそんなに心が狭いわけじゃない。」とキサラギさんが機嫌の悪い顔をみせると、
「いや、吉野さんかな?」と笑った声で石神さんが言って、
結城君が耳まで真っ赤になっている。

「おまえ、うちの秘書ばっかりに惚れてるんじゃないよ。」
とキサラギさんは呆れた声を出し、
「俺は結婚する前に妊娠させたりしねーよ。」
と結城君が言い返して、ふたりは睨み合った。

やれやれ。
美鈴ちゃんと、結城君かあ。
お調子者の結城君と、しっかり者の美鈴ちゃん。
良いカップルだね。と私は微笑む。

私がキサラギさんにスプーンで
「あーん。」とムースを差し出すと、嫌な顔のままで口を開けた。

みんなが驚いた顔をする中で、キサラギさんはムースをひとくち食べる。

「…不味くない。
いい匂いだ。カエデと同じ匂いがする。」とキサラギさんはちょっと笑う。

「カエデ先輩って抱きしめるとバニラの匂いがするよね。」と結城君がくすんと笑う。

「カエデの匂いを嗅ぐんじゃない!」とキサラギさんが怒った声を出す。

「美鈴ちゃんはストロベリーなんだよ」と結城君は笑い、
「春はイチゴの新作を作るよ。
出来上がったら、食べてね。」と言って、私に手を振り、病室を出て行った。

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