強引専務の甘い手ほどき
専務室のドアの外で、大きく息をつくと、
石神さんがちょっと笑い、
「そんなに緊張しなくていいよ。
慣れれば、扱い方を覚える。」
と言って、私と入れ替わりに専務室にのドアをノックする。
「石神、今俺の悪グチ言ってなかったか?」
とドアの隙間から専務の声がする。
「そう思うような、意地悪でもしたんですか?」
と石神さんんの笑った声がして、パタンとドアが閉まった。

ふー。
疲れる。

「西島さん。今日は僕に付いてファイリングの仕方を覚えて。
後、専務あてに来た郵便物の整理。
と、専務に呼ばれたら、付いて行って。」と言われ、慣れない事務作業を教わりながら、
悪戦苦闘をする。


「出掛ける。留守番しとけ。」
と専務が私の顔を見てから、クッと笑い、石神さんを従えて、出て行く。
「…はい。」と言うと、
「デスクには触るな。」と私の顔を見ずにいなくなった。

触らないって。
それに、なんで笑うの?
私が一生懸命仕事をしてるのに。


「ああ、西島さん。役員のお部屋の片付けは秘書の仕事です。
社外秘の書類もも多いから。
業者さんにお願いするのは、決まった時間です。
専務のデスクには触らず、周りを片付けて。」と上野さんが言った。

「はい。」と言って、専務室に向かう。
…なるほど。
デスクには触らない。
コーヒーカップを片付け、応接セットを拭き掃除をする。
専務のデスクは書類やファイルの山だ。

忙しいんだな。
とそっと端正な横顔を思い出した。





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