強引専務の甘い手ほどき
ハルはほとんど私の部屋にいるようになって、
2ヶ月経たずに、私の部屋に引っ越してきて、
部屋でケーキを試作したり、
私を毎日抱きしめて眠るようになった。

新しく任された仕事に、夢中で取り組むハルは
輝く瞳で未来を真っ直ぐに見ている気がして
私の手をとって、
明るいところに連れて行ってくれるとワクワクして、
彼のそばで生きていきたいってそう思った。


支店を任された1年経ったある日の朝。

「俺、そろそろ結婚してもいいかなって思って。
美鈴は俺の奥さんになる気はある?」と私の顔を覗くので、
「他に奥さんにしたい人がいるんですか?」と怒った顔を見せると、
「いや。美鈴に断られたら、今日のケーキが作れなくなる。」と困った顔を見せる。

可愛い。
仔犬みたいに私の瞳を見つめる。

「ケーキが作れなくなったら、ルピナスが困ります。
…良いですよ。結婚しても。」とくすんと笑うと、

「だよなあ。俺がケーキ、作らないと、ルピナスが困るよな。
ずっとそばにいてくれたら、
ずーっと美鈴のためにルピナスのケーキを作るよ。」と私にくちづけをする。

「ハルが好きです。」と私がハルの瞳を見つめると、
「俺の方がもっと好きだって…。」
とちょっとため息をついて私の顔を見て笑った。

私達は見つめ合い
もう一度、キスをしてから
仕事に行く準備をした。

マンションの階段を手をつないで降りる。

ふたりの指には真新しいお揃いの指輪が光っていた。

〜 おしまい。〜
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