強引専務の甘い手ほどき
専務と、石神さんが戻ってきた。
「コーヒー。3つ。」と私の顔を見る。
ここはティールームじゃないけど。
「はい。」と立ち上がると、
「また、こぼすから、ノックはせずに声をかけて、そのまま待ってろ。
ドアを開けるから。」と言って、部屋に入って行く。

「専務が秘書にドアを開けるなんてなかったですよね。
西島さんには優しいんですねえ。」と美鈴さんが言うけど、
「さっき、トレイを片手で持ってヨロヨロして、コーヒーこぼしたんです。」
と情けない顔を見せると、
「えー?だって、ティールームにいたんでしょう。」と言われる。
「あの、ヒールの靴って履きなれなくって。」と言うと、上野さんがプッと吹き出し、
「西島さんって見てると、飽きないわね。
さっきも、ファイリングの時、必死の顔をしてたし。」とふふ。と笑った。

見られてましたか。
情けない。

「コーヒー淹れてきます。」と私は給湯室に向かってトボトボ歩き出した。
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