強引専務の甘い手ほどき
フライドポテトを添えたハンバーグを頬張りながら
ご機嫌のケントに
「俺って、いい母親になれそう?」と聞くと、
ケントはキャハハと笑い、
「タクヤ君は男だから父親でしょ。」と言うので、
「じゃあ、俺がお父さんで、ケントは俺の子供になるってどう?」と笑いかけると、
「毎日美味しいものがたべられそうだなあ。」と俺の顔を見てから、
「うちのおかあさんと結婚したいの?」とケントは不思議そうな顔をした。

「そう思ってるんだけど、レイさんは嫌みたいなんだよねえ」
とちょっと悲しい顔でケントの顔を覗くと、

「おかあさんはタクヤ君のどこが嫌なの?」とケントは驚いた顔をする。

「…いや、嫌って言うわけじゃ…」とレイは真っ赤な顔でケントを見る。

「おかあさん、僕達はたくさん一緒に居れないから、
言いたいことはちゃんと言わないと、伝わらないって、
いつも僕に言ってるじゃん。なんで、ちゃんと言わないんだよ。」
とケントが真面目な声を出す。

俺はガタン、と立ち上がって、
「俺はレイさんと結婚して、ケントの父親になりたい。
1人じゃ寂しいから、仲良く3人で暮らしたい。」
と言って、ケントの顔を見ると、

ケントも立ち上がって、
「タクヤ君はサッカーもうまいし、料理もうまい。
僕はお父さんになるならタクヤ君がいい。」と言った。

レイの呆れた顔。

「レイさんも言いなよ。」と俺が微笑むと、レイはしぶしぶ立ち上がり、

「…私も、ケントの父親はタクヤ君がいい。」と消え入りそうな声でつぶやき、涙を落とした。

俺はケントを抱きあげ、レイの頭を撫でながら、

「よく出来ました。
レイさん、ケント、愛してるよ。
俺の家族になってね。」と満足のため息を吐いた。


そうして俺は1年遅れだけど、
キサラギと同じように、
ふたついっぺんに
シアワセってヤツを手に入れたのだ。

〜めでたしめでたし〜

< 121 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop