強引専務の甘い手ほどき
専務について歩くと車止めに運転手付きの黒塗りの車が待っていた。
…これで移動?ですか。
運転手さんが車のドアを開け、専務を車に乗せ、
「専務の運転手の上杉です。」と私に挨拶をする。
「ひっ、秘書室に配属になりました。西島です。
よ、よろしくお願いします。」と頭を下げると、
どうぞと、専務の隣に私を座らせ、ドアをそっと閉めた。

車の中は広く、小さくクラシックの音楽がかかっている。
専務は私の顔を見て、
「緊張すると、つっかえるのか?」と聞くので、
「す、すみません。」とうつむくと、
「俺に話す時もつっかえる。石神と話す時はつっかえない。
もう、仕事は終わってるから、もう少しリラックスしてくれ。」
と機嫌の悪い声を出す。

「どこに連れて行ってくれるんだ?
甘いもの以外なら、俺は嫌いなものはほとんどないぞ。」と笑った顔で私に聞く。
「で、ですから、専務にご紹介できるところなんて…。」と言うと、
「また、つっかえてる。
おまえがよく行く酒があって食事ができるところって言っただろ。」と顔を見るので、
「…私の家の近所の和食屋でいいんですか?」
とつっかえないように注意しながら聞くと、
「そこに行ってくれ。
電話番号で、上杉さんが連れて行ってくれる。」と言うので、
私は慌ててバッグからスマホを出し、バッグの中身を座席にバラバラと落とし
専務にクスクス笑われながら、
電話番号を確認し、上杉さんにお願いした。
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