強引専務の甘い手ほどき
「いらっしゃい。カエデちゃんのいい人かい?」と大将が笑う。
「ち、違います!か、会社の上司の…方です。」とだんだん小声になる。
「その全力の否定は気にいらないな。
日野と言います。こんばんわ。」
と眉間にシワを寄せた後、大将に笑顔を見せた。

「いい男だねえ、カエデちゃん。何を飲む?」
と、お通しを持っておかみさんがやって来た。

「とりあえず、ビールか?カエデちゃん?」と専務は私に笑いかける。

か、カエデって下の名前、呼ばないでほしい。
ドキドキする。

「と、とりあえずビールで。」と言うと、
「はいよ。」と大将。

「後は腹が減ってるんで
腹にたまるオススメいくつかお願いします。」と専務が声を出した。


鯵とイワシのお刺身。筑前煮。自家製豆腐の冷奴。
カモナスの肉味噌づめ。そら豆と桜海老のかき揚げ。などなど。

「美味いな。」と専務は美味しそうにどんどんビールを飲みながら、食事をする。
「専務、お腹空いていたんですね。」と顔を見上げると、
「キサラギ。」とジロリと見るので、
「キ、キサラギ…さんはお昼は食べないんですか?」と聞くと、
「タイミングが合わないと、食べない時もあるけど、
拓也と車の中で、コンビニのサンドイッチや、おにぎりを食うかな。」と言うので、

へえ。
と思い、

「コンビニ利用するんですね。」と言うと、
「普通にするだろ。
…ここって、昼もやってる?」
と大将に聞く。昼は定食です。と言われると、
「…ここ。いいな。拓也と来よう。」と独り言のように言って、
「カエデにいい店を紹介してもらった。」と笑いかけてきた。

気に入ってもらえたかなってホッとする。
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