強引専務の甘い手ほどき
昼休みに事務室の隣の会議室でお弁当を広げると、
「カエデちゃん、約束のシュークリーム。」
と紺野さんがトレイにたくさんのシュークリームを差し入れてくれた。
「ありがとうございます。」と休憩時間のスタッフが口々に言い、
「美味しーい。」と嬉しそうに食べている。
そんな風に嬉しそうに食べる顔を見られるのもすごく楽しい。
私もシュークリームをパクッと口に入れ、
いい匂いのするカスタードと、生クリームのコンビネーションを楽しんだ。
「すっごく美味しいです。」と力を込めて紺野さんに言うと、
「みんなの美味しいって顔がやりがいなんだよ。」と紺野さんが笑った。


昼休みが終わる頃、店長が会議室に顔を出し、
「カエデちゃん。休み時間が終わったら、店長室に来て。」と言われる。
「カエデセンパーイ。なんかやらかしましたか?」
と入社2年目パティシエの結城(ゆうき)君に笑われる。
(他の店舗で働いていた彼を連れて来たのは紺野さんだ。才能のあるパティシエらしい。
3歳年下の彼は何かと私をからかってくる。
カエデさんはシッカリしているようで抜けている。とよく笑われているみたいだ。
生意気なヤツ。)
「エッ?私ってなんかやった?」と赤くなって周りに聞くと、
「しょーがないひとだなあ。心当たりもないのに、慌てんなよ。」
とまた、結城くんがクスクス笑った。
私は、また、顔を赤らめながら、
「かっ、からかわないで!」
と怒って、お弁当の包みを片付け、店長室に急いだ。

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