強引専務の甘い手ほどき
専務は気にせず、
「イタリアンでいいかなぁ。」
と呟くように言って、上杉さんにお店を指示して、
車が、なめらかに動き出した。

「紺野さんと仲がいいんだな。」と笑い、
「カエデの事を大切な娘だって言ってた。」と私の顔を見た。
「紺野さんが作るケーキは丁寧で、温かい味がします。
今まで食べたケーキの中で1番好きです。」と私は専務の顔を見た。

「そう。美味いんだろうな。
カエデの好きなモノは、俺も美味いって思ってるし。
でも、結城の作るケーキはどうだろうな…」とブツブツ言って窓の外を見る。

どっちも食べられないでしょう。とちょっとおかしくなる。

「ずっと、甘いものは食べていないんですか?」と聞くと、
「まあ、そうだね。美味しいと思わないし、気分が悪くなる。」と顔をしかめる。

なるほど。

「チーズケーキとかどうですか?
甘さを抑えたものもありますけど。」と聞くけど、首を横に振って、
「食べたいとは思わない」と私の顔を見た。

結構重症だ。
だから、私が呼ばれたんだろうけど…。

甘いものは幸せな気持ちになるのに、残念だ。



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