強引専務の甘い手ほどき
「いらっしゃいませ。日野さま。
こちらにどうぞ。」と個室に案内される。

「オマールの良いものが入っています。」
と、言われて、私にエビは食べれれる?と聞き、頷くと、
「じゃあ、それと、いつものウサギの煮込み。
後は任せるよ。全部シェアする。生ハムは前菜に出して。」
と言って、いいかな。と私に笑いかけた。

私は頷く。ウサギなんて食べたことないし…。
やっぱり、ルピナスの跡取りだ。
贅沢な場所に慣れているし、美味しいものを食べ慣れてる。

住む世界が違う人。

そう思いながら、ワインのグラスをあげて、口をつけた。

出てきた料理はどれも美味しくて、
仕事の話はせずに、
専務が3人兄弟の1番上で、妹が2人いる事を話してくれ、
私の家族の話も聞きたがった。
(キサラギさんの上の妹さんは企業の研究職に就いていて、
下の妹さんはルピナス本店の事務の仕事をしている。と言った
下の妹さんとは私もたまに挨拶していた。大人しい可愛らしい女の子だ。)

私は東北の生まれで、
短大に入るときに横浜に来たこと。
実家には5歳離れた兄と、両親がいて、
普通のサラリーマンの家庭に育った事。
おやつは母の手作りだった事や、
よく食べ過ぎて、母に怒られたりした事を話した。

今日の私は自分の事をしゃべり過ぎる。
専務が楽しそうに聞いてくれるから…。かな。

私は少し酔ったかな。

やっぱり、専務は遠い人だ

ってそう思うと、
少し悲しかったのかもしれない。




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