強引専務の甘い手ほどき
デザートのカシスのシャーベットを食べていると、
「カエデはいつも美味しそうに食べるな。ずっと見ていたい。」と私に笑いかけるので、
「ずっーっと食べていたら、太ってしまいます。」と少し機嫌の悪い顔をみせると、
「毎日見たいって事だよ。毎日一緒にいたい。」と私の瞳を覗く。
「キサラギさんとは毎日顔を合わせてるって思いますけどぉ?」と専務の顔をジーッと見つめると、
「鈍いヤツだな。俺の事は嫌い?」と機嫌の悪い顔をみせる。
「キサラギさんの事は、尊敬しています。出来る上司ですしぃ。」と言うと、
「カエデと俺とはパートナーだろ。」とため息をつく。
「アッ、そうでしたぁ。有能なパートナーです。」とクスクス笑うと、
「カエデ、酔ってる?」と専務はやっと気付いたみたいだ。

「酔ってます。ワインってあんまり飲まないんで。」と言うと、
「そうか。失敗したな。前に酒に弱いって言ってたっけ。
ちゃんと話が出来なそうだ。」とクックッと笑いだした。

「なにがあ、おかしんですかぁ?」と聞きながら、あくびが出る。
「いや。今日は疲れたか?」とそっと手を引いて私を立たせる。

「うん。緊張しました。ケーキの試食。でも、美味しかったです。」
と専務に身体を支えられながら、歩く。
なんだかフワフワする。
「そうか。よかったな。」と専務はまた、クスクス笑う。


車に乗ると、
「少し、寝るといい。」
とそっと抱き寄せられたので、肩にもたれてウトウトした。

私のマンションにいつの間にか着いてそっと起こされる。
専務に支えられゆっくり、ドアの前にたって、鍵を開けた
「おやすみ。」と専務は私の頭に唇を付ける。
私が思わず、頭に触ると、
「明日まで覚えてるかな」とくすんと笑って
「鍵を閉めろ」と怖い声を出す。
私は慌ててドアを閉め、鍵をかけると、
「よし。」と笑った声で言って足音が遠ざかった。

私はベットに倒れこみ、
失敗したなあと思い、
もう一度、専務の唇が付いたところにそっと触って、
眠ってしまった。
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