強引専務の甘い手ほどき

納涼祭当日。
私は藍色に浴衣にキキョウの柄が白く描かれた着物にくすんだ黄色の帯を着付けてもらった。
（結局、浴衣を買い換えると言った美鈴さんと一緒に行って選んでもらった。）
美容室には専務からガラスの美しい帯どめが届けられていて驚いたけど、
とても綺麗で、嬉しかった。

髪をアップに上げ、トンボ玉のようなガラスの飾りの付いた髪飾りを2つ付けて
小さなカゴのバックを持って緊張しながら、迎えが来るのを待った。

車が滑るように時間通りにやって来て、
上杉さんがいつもの様に私に車のドアを開けてくれ、
ゆっくり車に乗り込むと、
黒のカスリの浴衣を着た専務と、
助手席に座ったスーツ姿の石神さんがいた。
「浴衣、よく似合うな。」と専務が微笑み、私の顔を覗く。
「あ、ありがとうございます。専務。帯留め、ありがとうございました。
…専務も浴衣よく似合っています。」と小さな声で言うと、
「帯留めは気に入ってくれたか？」と私に笑いかけるので、
「…はい。」とうつむき赤くなると
「ハイハイ。いちゃいちゃしない。出発するよ。」と石神さんが笑った。


クルーザーが付けれれた桟橋には大勢の人が集まっていて、賑やかだった。
周りと挨拶を交わす専務の後から、石神さんと一緒について行くと、
クルーザーに乗り込む時に、手を取られ、
「今日は隣にいて。」と専務は私の瞳を見る。
ちょっと驚く私に、
「カエデが他の男に誘惑されると困る。」
と私の腰に手を当て、エスコートしながらクルーザーの中をゆっくり歩き出した。
私が焦って、石神さんを振り返ると、
「良いよ。キサラギの好きにさせてやって。」と笑い、
石神さんは美鈴さんを呼んで、自分の隣におき、
専務の後を歩いて、専務と一緒に周りと挨拶をしたり、話をしたりした。
私は専務の隣で、少し緊張しながら、話の輪に加わったり、専務と料理をたべたりした。

クルーザーが止まり花火が始まる時間になる。
大きな音を立てて花火が美しい花を咲かせた。